空き家問題の社会的背景

空き家の増加原因を理解するためには認識しておくべきいくつかの重要な時代背景があります。

• 戦後から高度経済成長時代にかけて大量に供給された公営住宅やマンションなどの集合住宅が、老朽化して住み手がなく空き部屋（空き室）になっている。
• バブル崩壊後の土地活用によって大量に立てられたアパート・マンションが、空き部屋（空き室）の増加に拍車をかけている。
• 高度経済成長で土地付きの一戸建て住宅を購入した団塊世代の持ち家比率が高く、相続した実家である住宅に住む必要がなく空き家になっている。
• 家族を育んだ家、後世に残したい土地や家という情緒的な面から、賃貸・売却を躊躇することで、時間が経過し空き家になってしまう。
• 全国的に都市部への人口集約が進行し、過疎化した地域にある住宅が空き家になっている。
• 新築住宅志向の日本においては中古住宅の需要が低く、売り手が付かず空き家になっている。
• 高齢化の進行で、相続時に資産運用の一貫として建設した賃貸アパートの借り手が付かず空室になっている。
• 空き家予備軍といわれる生涯未婚の単身者や、一人暮らし高齢者が急増し、空き家のさらなる増加が懸念されている。

空き家となるきっかけ

空き家は相続がきっかけとなる他、老人ホームへの入居、子供との同居、転勤、高齢で行けなくなった別荘が空き家になるなど様々です。相続したものの、借り手や買い手がいない、共有で相続したため合意形成が困難、利活用はしたいが採算性が低く事業に利用できない、家財の処分が難しいなどの理由で空き家になるケースが多くなっています。また、老朽化した建物を取り壊したくても、解体費用がかかるだけでなく固定資産税が増額になるため、具体的な対応策が見つからないまま、不安を抱えながら空き家を所有しているという方もいらっしゃいます。

法律における空き家の定義

少子高齢化による人口減少を背景として、年々増加する空き家が社会に不利益となることが問題視され、政府は2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」（通称：空き家対策特別措置法）を制定して対策に乗り出しました。この法律では、一年以上、居住その他の使用がなされていないことが常態である空き家に加え、適正に管理されていない状態にある「管理不全な空家等」と、放置することが適切でない「特定空家等」を定義し、空き家の放置に対する措置を明確にしています。「特定空家」に指定された場合、固定資産税の優遇処置が適用されなる他、最悪の場合は行政による代執行の処置として解体（解体費用は所有者負担）される場合もあります。適切に管理されていない空き家が及ぼす問題については、空き家のリスクとトラブルをご覧ください。

空き家問題は地域での取り組みが重要

空き家対策特別措置法に則って、市町村の代執行による解体などが行われた場合、費用は所有者に請求されますが、所有者不明などで回収が困難な場合は税金によって負担せざるを得ない事態も考えられます。放置された空き家が、近隣住民の悩みの種となっている事例も各地で起こっています。空き家問題は地域社会に密接に関わるため、市町村が中心となり、地域住民、地域の不動産業者や建築業者、弁護士や税理士など専門家や有識者が連携して解決することが求められています。また、空き家バンクなどの情報を有効活用して実態を把握し、所有者と利用者をつなぐ取り組みも進められています。

賃貸・売却や利活用に向けた空き家の管理

空き家問題は相続や法律、税金など様々な事情を理解し、賃貸・売却や利活用などにおいて良い機会が訪れた際に最善の選択を行えるよう、適切な管理を行うことが重要です。例え空き家が自宅近くにあって頻繁に通って維持管理を心がけていても、やはり人が居住している建物と比較すると、相応に劣化が進み資産価値が低下していきます。特に空き家が遠方にある場合は、継続的な管理に多大な労力を要します。情緒的な面などもあり簡単に割り切れる問題ではありませんが、適切な管理を行いながら、なるべく早い時期に賃貸・利活用や売却を含めて、所有する空き家の将来を検討することが大切です。

空き家問題は私たちにご相談ください

空き家問題の解決は、当事者だけで抱え込まずに行政や専門家を活用することが近道です。空き家の管理ネットワークでは、各種専門家と連携して空き家問題の解決に取り組んでいます。空き家のことでお困りの点やご心配な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。今すぐに賃貸・利活用、売却されない場合は、専門家に管理を依頼することで負担やリスクを軽減することができます。